hkia_high_rise


摩天楼だけじゃない   ~建築から探る香港~


開  会  式: 2018年10月31日(水)※招待者のみ
展示期間: 2018年11月1日(木)~11月11日(日)
開館時間: 10:00 ~ 22:00 JST
会  場: 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM
(東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F)
主  催: 香港建築士学会
後  援: 公益社団法人日本建築家協会
協  力: 香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部

本展について


「摩天楼だけじゃない ~建築から探る香港~」では、香港という街の複雑性を映し出す建築プロジェクトとコンセプトを紹介します。

香港の都市景観のダイナミクスをひも解くことで、本展は濃密さと鮮烈さの美学を標榜する香港独自の都市形態を探る旅へと見る人を誘い、香港建築士学会に所属する28のメンバーによる16の展示を通じて、香港の隠れた側面を明らかにしていきます。

オープン・フォーラム


話  題: 香港と日本の若手建築家フォーラム - 機会と課題
日  付: 2018年11月10日(土)
時  間: 14:00 ~ 16:00
モデレーター: 教授 岩村和夫(東京都市大学名誉教授)
スピーカー: 陸沛靈(ジェーン・ルック)(展覽会場デザイナー)
謝錦榮(ケネス・ツェー)(出展者~ビバ・ブルーハウス)
馬場兼伸(ビーツーエーアーキテクツ株式会社 代表取締役)
近藤哲雄(近藤哲雄建築設計事務所 代表取締役)
ダウンロード: モデレーターとスピーカーの略歴   

2018年11月10日にオープン・フォーラムに登録するには、2018年11月9日午後2時(JST)までに氏名とメールアドレスをexhibition@hkia.netまでお送りください。

コンセプト

摩天楼だけじゃない ~建築から探る香港~

香港ウィーク2018建築展
会場: 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM

摩天楼だけじゃない ~建築から探る香港~
この建築展は、香港の建築プロジェクトとそのコンセプトが織りなす風景を提示することで、香港の複雑性を浮き彫りにしています。高層ビルが立ち並ぶ都市を鳥瞰的に捉える従来型の手法に代わり、香港建築士学会の若手建築家が自分たちの都市を様々なスケールで探求した作品を集めています。展示作品は、都市戦略の象徴ともいえる“PMQ”、建物のバックボーンに注目した“回廊”、マテリアルを題材とした“マテリアル・キュイジーヌ”など、多岐にわたります。さらに“ブルーハウス”での共同生活や“ライチウォー村”での自然に回帰する暮らし、二面性を持つ“建築トーテム”などを通して、現代の香港における多様な居住スタイルを描き出しています。

香港の景観が内包するダイナミズムを解き明かし、密集と緊張の美学をたたえる香港特有の都市の形を探りながら、香港の隠れた側面を発見していただきたいと思います。



プロジェクトリーダー
香港建築士学会 特別会員
太平紳士 吳 永順(ヴィンセント・ウン)
香港建築士学会 特別会員
教授 朱 海山(ポール・チュウ)


主催者について (香港建築士学会)

香港建築士学会(HKIA)

1956年9月3日、27人の建築士により香港建築士協会が創設されました。会員数の増加に伴い、その専業団体としての地位は、英国王立建築家協会の認可を得ました。1972年には正式に「香港建築士学会」に改称し、活動の新たな段階を迎えました。

1990年には香港建築士学会設立条例(1147章)が制定され、以来学会の運営が管理されています。

現在、香港建築士学会(HKIA)には4,500人以上の会員と190以上の法人会員が登録しています。香港以外の拠点として2006年より北京オフィスが設立され、運営を行っています。

学会員は、建築のプロフェッショナルとしての責務に加え、行動模範の遵守が規約により定められています。この規約は、公益を目的とする学会において、会員に求められる行動模範や自己規律を示すものです。

http://www.hkia.net


協力(香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部)

香港特別行政区政府
駐東京経済貿易代表部(香港経済貿易代表部)

香港経済貿易代表部は香港特別行政区政府の駐日代表機関として、香港-日本間の経済・貿易関係、相互理解と協力、文化・観光交流の促進に努めています。香港の情報や香港との関係構築を求める日本の皆様への窓口となるとともに、各種PR活動を実施するほか、日本と香港の要人や代表団が双方を訪問する際の支援を行っています。

https://www.hketotyo.gov.hk/japan/jp/


後援(日本建築家協会)

公益社団法人日本建築家協会

世界最初の建築家協会は、イギリスで創立されたRIBA(英国王立建築家協会) です。今から170余年前、1837年のことです。アメリカでは1857年にAIA(アメリカ建築負家協会)が創立され、日本ではアメリカに遅れる事30年、1886年に造家学会が創設され、当時は全員が建築家であり建築設計者であることが会員に要求されていました。この造家学会が、今の日本建築家協会の起源といえます。明治開国ともに新しい西洋的な建築が導入されたことにともない、現代的な意味での建築家も輩出し始めました。その第1回生が工部大学校(東京大学工学部の前身の辰野金吾たちで、日本銀行本店、東京駅、赤坂迎賓館等をつくってきました。その後、造家学会は日本建築学会と名を改めますが、大正3年(1914年)に学術団体としての色彩を強めた日本建築学会から別れ、建築家集団として全国建築士会が成立します。そして戦後、昭和25年(1950年)に建築士法が制定されました。1947年に日本建築設計監理協会、そして1955年の国際建築家連合への加盟に伴い、翌56年に改組・改名して日本建築家協会となりました。その後日本建築設計監理協会連合会と合併し、1987年新日本建築家協会として再スタートを切り、それが現在のJIAとなります。1996年に名称を日本建築家協会と変更し、現在に至っています。2013年4月、公益社団法人に移行しました。

http://www.jia.or.jp






プロジェクトリーダーの経歴

吳 永順 (ヴィンセント・ウン)

香港建築士学会の前会長である同氏は、経験豊かで著名な香港の建築家であり、ベテランから若手までさまざまなメンバーとともに活動しています。2013年にタイクープレイスのアーティスツリーで開催され、2万人以上が来場した香港建築士学会主催の建築展「REVEAL」ではリーダーとして、台湾で開催された香港ウィーク2015での「過去・現在・未来~香港建築を追う」展では主要メンバーとして開催に携わりました。




朱 海山教授 (ポール・チュウ)

現在、香港建築士学会の名誉幹事を務める同氏は、ヴェネツィア・ビエンナーレや香港・深圳都市建築ビエンナーレ等の出展者であり、台湾で開催された香港ウィーク2015での「過去・現 在・未来~香港建築を追う」展、2016年に香港で開催された「若手デザイナーによる革新的住宅デザインコンペと建設」展、2015年、2017年、2019年の「香港建築士学会 両岸建築デザインシンポジウムおよび授賞式」等では、デザインコンペや展示の運営において主導的役割を担っています。


会場デザインのコンセプト

香港の都市開発の歴史
香港の中心部で急速に開発が進んだのは、英国による統治が始まった1800年代の中期以降のこと。それ以前の香港は、中国の南端に佇む、山々と海岸線に囲まれた閑静な一帯でした。今も香港の面積の約7割では、美しい自然の景観が広がっています。

香港の国際的なイメージ
香港の一般的なイメージと言えば、高層ビル群が立ち並ぶ高密度の街並みを、人々がせわしなく歩く光景ではないでしょうか。しかし香港の写真を注意して見れば、高層ビルの背後にある美しい山々や、ビクトリア・ハーバーのなだらかな海岸線に気づくことでしょう。香港の写真から山や海を取り去ったら、と想像してみてください。そうすると、高層ビル群は今ほど印象的な姿ではなくなるはずです。

景観の抽象的表現
本展の会場デザインは、香港の見過ごされがちな景観を抽象的に表現したものです。天井から吊り下げた布と、ステージを囲むように配置された腰掛けられる造形物、そして空間を照らす自然光と人工の灯り。自然と人工物が共存する趣のある空間で、本展をお楽しみください。


会場デザイナー

陸 沛靈(ジェーン・ルック)

香港出身の公認建築家・建築物サステナビリティ専門家。東京、ロンドン、香港で8年を超える実績を積む。中でも東京の藤本壮介建築設計事務所に在籍した4年間には、モンペリエ(フランス)における住居プロジェクト“L’Arbre Blanc(白い木)”や、東京の“表参道ブランチーズ”など、同事務所の代表的なプロジェクトに携わった。

現在はパートナーの鄧 秉奇(ジャッキー・タン)と共にスタジオ“A16”を運営し、小規模な設計プロジェクトやコンペティションに参加。ライターとしても活躍中で、東京で暮らす建築家としての日々を綴った著書“Tokyo, Dream & Life”を出版。


出展者


01 香港ハウス 葉 晉亨
(チュンハァン・イップ)
吳 鎮麟
(オットー・ウン)
姜 棨騰
(ハンフリー・ケン)

香港ハウスは、新潟県津南町の閑静な集落にある小さな緑地の北側の一角に建てられました。越後妻有アートトリエンナーレの主舞台である上郷クローブ座の斜め前に位置する香港ハウスは、上郷地区の人々が集う新たなスポットであると同時に、香港のアーティストが芸術祭開催時に自分たちの作品を披露する場所でもあります。この控えめな雰囲気の小さな家の特徴は、地元の杉を使ったファサードと、鎧戸やLEDサイネージ、郵便受けなどに取り入れられた香港的な要素です。静かに佇む香港ハウスは、地区に並ぶ家々に自然に溶けこんでいます。

葉 晉亨(チュンハァン・イップ)はLAABの建築ディレクター、公認建築家、AP(管理者)。香港大学およびカリフォルニア大学バークレー校卒。

アートと建築の間の葛藤を掘り下げ、建築実務の中で設計と建築の相乗作用を高めることに深い関心を持つ。2014年度香港建築士学会若手建築家賞受賞。

吳 鎮麟(オットー・ウン)はLAABの設計ディレクター。香港大学とMITで建築を学び、米国、英国、イタリアで活動。

イノベーターとしての評価が高く、Tatler誌の“香港の若手ゲーム・チェンジャー”や、ニューヨーク・アート・ディレクターズ・クラブ(ADC)の“ヤング・ガンズ”に選出。

姜 棨騰(ハンフリー・ケン)はLAABの建築設計士。過剰に開発された環境の中で生まれ育ったことで、設計とは人間性を取り戻すことだという信念を持つ。2013年アジア建築家評議会(ARCASIA)学生デザインコンペティションで最優秀賞受賞。


02 裏香港 姚 永鍵
(ケント・イウ)
石 俊偉
(アラン・シェイク)

香港といえば、高い人口密度と超高層ビル群が有名です。ビクトリア・ハーバーに光り輝く摩天楼がそびえる光景こそが、ほとんどの方が描く香港のイメージでしょう。マクロ的に見れば、香港は効率的な工学と建築、合理性に彩られた典型的な現代都市です。しかし、香港の都市構造を本当に体感・理解したいなら、外側からではなく内側から見るべきです。マクロの壁とタワー群を縫うように存在するミクロの層こそ、この街の代名詞であるエネルギーとダイナミズムを生み出しているのです。

姚 永鍵 Kent Yiu(ケント・イウ)はトロントのライアソン大学で建築学理学士号、ハリファックスのダルハウジー大学で環境デザイン研究の学士号と建築学修士号を取得。プロジェクト建築家として、商業、住宅、機関、土木のプロジェクトで幅広い経験を積む。また、設計とプロジェクト管理の経験を活かして、高級内装プロジェクトも手掛けている。

石 俊偉 Alan Shek(アラン・シェイク)はトロントで建築学理学士号を取得。香港へ帰国後、複数の国際的な設計事務所に勤務。その後、香港大学で建築学修士号を取得。以前の勤務先では、景観、インテリア、建築の設計家として幅広く経験を積む。性質の異なる多くのプロジェクトに携わってきたオールラウンドな建築家。米国グリーンビルディング協会からLeed APの認証を受け、低炭素建築設計の提案を推進している。


03 回廊 黃 立明
(ラップ ミン・ウォン)
許 頴怡
(ウィング イー・ホイ)

香港に暮らすほとんどの人々にとって、家に帰る途中で狭く名もない場所を通るのは、日常的な体験です。巨大な都市構造のすき間にあるそうした“回廊”で、私たちは毎朝家を出ると隣人と会い、夜には恋人との別れを惜しみます。しかし、効率性という単純な理由以外では、急速に発展する住居のタイポロジー(類型論)に沿って回廊の美と存在に注意を向けることはほとんどありません。風通しのよい社交の場であり、装飾が彩る安全な通り道でもある回廊は、気楽な雰囲気の三次元的ギャラリーとして、尽きることのない感情と交流を誘うのです。

黃 立明 Wong Lap Ming(ラップ ミン・ウォン)と 許 頴怡 Wendy Hui Wing Yi(ウィング イー・ホイ)はともに香港出身の建築家で、2人のコラボレーションは10年以上に及ぶ。香港で生まれ育ち、香港大学で建築学文学士を取得後、ノルウェーのオスロ建築デザイン大学で建築学修士号を取得。2017年に、香港を拠点とする建築とデザインの共同体“no Architects (noA)”を共同で設立。日常の自然や文化の本質的要素から得たインスピレーションを、人との密接なかかわりの中で表現している。


04 超高層ビルのバックボーン 龔 翊豪
(アルヴィン・カン)
羅 晉偉
(ジャスティン・ロー)
黃 瑋皓
(ザカリー・ウォン)

1960年代に初めて導入されたX階段は、高密度の居住空間対策として香港の建築家が編み出し、国際的に知られるようになった建築のイノベーションです。

その発想は、異なる向きの二つの階段を交差させ、2方向からのアクセスを可能にするというもの。高層ビルの背骨として安全性を確保するだけでなく、屋上ガーデンや低階層エリアといった共用スペースへの通路にもなります。

普段は気に留めない存在でありながら、その幅や配置、段数、踊り場などは、建物の動線を決定づける要素となります。X階段を必要不可欠な存在として取り上げることで、この展示ではその構造上の効果に光を当てています。

この忘れられつつある香港独自のアイディアは、今後も高層ビルのバックボーンとして活用すべきなのです。

龔 翊豪 Alvin Kung(アルヴィン・カン)、羅 晉偉 Justin Law(ジャスティン・ロー)、黃 瑋皓 Zachary Wong(ザカリー・ウォン)はいずれも香港中文大学建築学系を卒業後、建築家・講演者・展覧会出展者として、分野横断的な多様な活動に従事。いずれも香港建築士学会若手建築家賞最終候補者である3人は、歩んできたキャリアはそれぞれ異なるが、文化・公共建築物への共通のヴィジョンを持ってデザインを追求する旅を続けている。インスタレーションや建築を通じて構築環境の現状に疑問を投げかけることで、共通する素晴らしい何かが見えてくると信じている。2015年以降はチームとして台湾やオーストリア、イタリア、スペイン、米国など、国内外の多数のコンペや展覧会に参加。その優れた設計能力が国内外の機関で認められ、これまでにクリエイトスマート・ヤングデザインタレント賞、デザイン・フォー・アジア金賞、FuturArc賞一等賞、ゴールデン・ピン・デザイン・アワード最終候補、Young BIMer of the Year、大邱国際アイデアコンペティション特別賞、香港建築士学会年度賞を受賞。


05 建築トーテム 趙 恒美
(グレース・チウ)

北米のトーテムは、部族の物語を記録するための手段でした。

高層ビルは香港のトーテムであり、そこにはこの大都市の発展の物語が記録されています。似通って見えるビルのそれぞれには、異なる物語が隠されているのです。

この展示では、香港の実際のヴィラプロジェクトで使われた建築モジュールを積み重ねて、トーテムポールを作りました。空間構成の異なるそれぞれのモジュールが、さまざまな生活の側面を物語っています。

趙 恒美(グレース・チウ)は2008年度若手建築家賞受賞。2009年には香港の建築雑誌Perspectiveによる40歳未満の優れたデザインプロフェッショナル40人の一人に選出。2015年にはアジア建築家評議会(ARCASIA)トラベル賞を受賞。

cocoon architecture ltdの共同創設者。各種プロジェクトで“デザイン・フォー・アジア賞”“パースペクティブ賞” “A’  Design Award”を受賞。イタリアのヴェネツィア・ビエンナーレの国際建築展の展示作品に選出。

建築以外の活動としては、イラストブック“Flying Slowly in Tibet”を執筆・出版し、“First Greater China Illustration Awards”を受賞。

建築学の学士号と修士号を取得した母校の香港大学で、准教授として論文と建築設計スタジオの指導に当たっている。


06 スペア・スクエア 黃 智勤
(ケネス・ウォン)
王 俊傑
(マルコ・ウォン)

記憶とは鳥のようなもの。籠の中に留めておかなければ飛んでいってしまう。

香港にかつて存在し、今は消えつつある、限りなく詩的な光と影と生命。それらを捉えて、大切な記憶として籠の中に閉じ込めようとしました。

スペア・スクエアは、かつて空き時間を楽しんだ場所。もしも失われることがあれば、都市の発展の中で忘れ去られてしまうのです。

デザインアシスタント: 高 卓宏 (チャピン・コイ)

黃 智勤 Kenneth Wong(ケネス・ウォン)は香港のAGC Design Ltdの建築設計家。香港、東京、バーゼル(スイス)で、ヘルツォーク & ド・ムーロン、伊東豊雄、隈研吾、ロッコ・イムなど、世界的に著名な設計事務所も含めて7年にわたり実績を積む。

九龍倉集団(ワーフ)による建築設計インターンシップ・プログラムに選抜される。2018年にはアジア建築家評議会(ARCASIA)トラベル賞を受賞し、東京の明治大学で作品を発表。 

王 俊傑 Marco(マルコ・ウォン)は現在、香港のAGC Design Ltd.で実務に従事。設計作品が各種の展覧会や賞の選考対象に選ばれる。受賞作品のひとつ、タイムズスクエア・リビングルーム・ミュージアムは、設計と構造に最大の柔軟性を備えた公共のオープンスペースに博物館の空間を集約した例として、たびたび紹介されている。

Marcoも2016年、九龍倉集団(ワーフ)の建築設計インターンシップ・プログラムに選抜され、SANAA事務所で勤務。


07 PMQ 香港特別行政区政府 建築局

クリエイティブ産業のランドマークに生まれ変わった旧既婚者向け警察宿舎

香港の変化を象徴する存在ともいえるPMQは、1841年の英国による植民地化以降、香港人のアイデンティティを形作ったいくつかの社会経済的な大変革において、その一翼を担ってきました。この展示作品は、既婚者向けの警察宿舎だったPMQがクリエイティブ産業のランドマークへと生まれ変わった様子を紹介しています。かつての住民の暮らしぶりと、現在の最先端スポットとして賑わう様子を断面モデルで並べることで、この建物が時代ごとにどう利用され、人々にどう認識されてきたのかを伝えています。

PMQの受賞歴
  • 2014年度グッドデザイン賞
  • 2014年度香港建築士学会賞:特別建築賞-遺産とその再活用
  • 2014年度香港建築士学会賞:優秀賞
  • 香港エンジニア協会優秀構造賞2015:最優秀賞(遺産)
  • 香港景観設計士協会デザイン賞2014:優秀賞
  • 香港プランナーズ協会賞2015:審査員特別賞
  • 英国王立チャータード・サーベイヤーズ協会香港賞2015:年間最優秀改装・修復チーム
  • デザイン・フォー・アジア2015:最優秀賞
  • 高品質建築物賞2016:最優秀賞
  • アジア建築家評議会(ARCASIA)建築賞2016:功労賞(保全プロジェクト)
  • UIA(国際建築家連合)ソウル2017:論文&デザイン作品賞

香港特別行政区政府の一部門である建築局は、香港にある政府所有や政府出資の施設について、監察および助言業務、施設の維持管理、そして施設の開発を担当している。

市民によりよいサービスを提供するため、業界パートナーやユーザー部門、および関係者と協力しながら、公共施設の開発と維持に尽力している。政府や準政府機関に専門的な助言や技術的なアドバイスを提供し、補助金事業や委託プロジェクトの監督にあたっている。


08 見えない風景
~城門川の歴史を紐解く
李 國欣
(サラ・リー)

“見えない風景”は川沿いの道に建つ12の特徴的 な建造・インスタレーションを通して沙田都市のユ ニークな歴史を紹介するプロジェクト。急速に増加 する人口に対応するための都市計画のモデルとし て、香港で初めてニュータウン開発が行われた様 子を、一連の空間装置を通じて紹介することで、見 る人をこの街の歴史へと誘います。

周囲の状況に応じて変化してきた城門川沿いの 小道には、当時の文化の名残が見られ、都市と 自然の風景、地理的基盤、文化やスポーツの遺 産の間にある過去と現在を結び付けています。

李 國欣 Sarah Lee (サラ・リー) はロンドン大学バートレット建築学部で建築学修士号を取得。“Professional Practice and Management”研究で優等、空間記号論および空間アイデンティティ形成に関する拡大研究で表彰。

共同デザインスタジオSKY YUTAKAの創設パートナー。2016年のEight Gatesランドスケープ・プロジェクトでA&Dトロフィー賞の最優秀ランドスケープ賞を受賞。

海外での生活や仕事の経験に基づいて未来を切り開くアイデアを追求しながらも、地域の文化や事情を尊重し批判する精神を保持し続けている。建築とは、アート・インスタレーション、景観、建築設計を含む構築環境を通して都市文化を探求するものだとの信念を持つ。職業間や国内外のコミュニティの異文化交流にも熱心に取り組んでいる。

補足情報:
建築学理学士(優等)、ディプロマ、建築学修士、“Professional Practice and Management”学(優)、香港建築士学会正会員、英国王立建築家協会(RIBA)会員、公認建築家(香港および英国)


09 マテリアル・キュイジーヌ 蔡 偉權
(クエン・チョイ)
葉 健倫
(アンガス・イップ)
鄧 知蘅
(ジャビアン・タン)

香港は多面的な都市であり、その美しさは、これほどの狭いエリアに多彩な景観が存在することにあります。どの景観も、特有の“マテリアル”構成、文化、活動で成り立っています。この展示を通して私たちは、香港の今の景観を、様々な“フレーバー”ミックスとして記録したいと考えました。

その手段(媒体)として食べ物を用い、皆様にお楽しみいただけるように、風変わりな“マテリアル試食メニュー”に仕立てました。

メニューに含まれる料理は、香港の景観を構成するマテリアルを再現したものです。香港の都市を構成する多様性を楽しむだけでなく、気軽に他の方々と交流や会話をする機会にしていただきたいと思います。結果的に、これらの料理が香港の都市開発と計画への興味喚起につながることを願っています。

葉 健倫 Angus Yip(アンガス・イップ)、蔡 偉權 Kuen Choi (クエン・チョイ)、鄧 知蘅 Javian Tang(ジャビアン・タン) は香港大学で建築学文学士号を取得。AngusとKuenは同大学にて修士号を取得、Javianはミシガン大学トーブマン・カレッジで建築学修士号を取得。

Kuenは2015年のChinese Young Guns Winnerに選出。Javianは2017年香港建築士学会若手建築家賞の最終選考候補。Angusを合わせた3人は、“Atelier J-AR”の名でA’ Design AwardやA&Dトロフィー賞エクセレンス認証(アジア太平洋地域)などを受賞。また香港2017年シティドレスアップ・パブリックアート・コンペティションで優勝。

より幅広く包括的に建築に取り組むことに情熱を燃やし、規模に関係なく、どのような形であっても地域と人々に貢献する機会を追求している。要素を見つめ直して空間を再考し、地域文化に新たな解釈を加えることで、香港に親近感を持ってもらいたいというのが最大の希望である。


10 保全、そして絆。 洪 彬芬
(ファニー・アン)

保全とは、形ある遺産を守ることだけでなく、遺産が帰属する人々の間の目に見えない絆を守ることでもあります。保全の過程で行われる議論や、工事完了時の祝祭を通して、関係者は集い、交流し、地域社会に貢献します。帰属意識が再認識され、より強いものとなります。

形ある遺産の保全活動は、それほど大規模なものでなくても、その社会的影響や強固になった人々の絆には、計り知れない価値があるのです。

By Fanny Ang

洪 彬芬 Fanny Ang(ファニー・アン)は香港で保全活動に携わっている数少ない建築家の一人。建築を学び、数年にわたり建築の実務に従事した後、保全に関する修士号を取得。それ以来、保全に重点を置いた活動を行い、解体ではなく保全によって、よりよい香港を築くことを目指している。香港特別行政区政府の保全建築家として、“パートナーシップによる歴史建造物再生計画”を実施した後、セントラル警察署建築群再生などのプロジェクトには建築家として個人資格で参加。2010年若手建築家賞特別賞を受賞したほか、2008年には“大澳(タイオー)再生デザインコンペティション”で優勝、2010年には、米国で建築と一般市民との接点に関する研究を行うため、アジアン・カルチュラル・カウンシルのフェローシップを獲得。最近の保全活動でも、2015年最優秀香港建築士学会メダル(対象プロジェクト:旧最高裁判所の終審法院への改築)、2018年ユネスコアジア太平洋文化遺産保全賞最優秀賞(対象プロジェクト:ブルーハウス建築群の再生)などを受賞。2015年にANG Studio Ltd.を設立し、遺産保全への貢献を続けている。


11 オーバー65 葉 頌文
(トニー・イップ)

この展示では、港や小さな緑地スポット、都市と郊外の公園、あるいは通りや建物の低階層エリア、屋上ガーデンなど、都市の様々な緑地を紹介し、それらが高密度・高層の空間において、社会の一体化や子供(身長65cm以上)やシニア層(65歳以上)の健康や幸せに及ぼす影響について示しています。

地上から高く離れて暮らすほど、自然環境から切り離される感覚は強くなっていきます。都市の喧騒の中でも植物を育てたいという欲求は、私たちが顧みてこなかった人間の本質と結びついています。そこから導かれるのは、自発的な行動とパラダイムシフトであり、私たちは都市を緑化し、再び生命力で満たす方法を探し続けるのです。

葉 頌文 Tony Ip(トニー・イップ)はコミュニティ中心のサステナブル設計を行う建築家・アーバンデザイナー。グリーン建築に対する情熱と貢献が評価され、Ten Outstanding Young Persons Award(2016年)、EcoStar Award(2014年)、香港建築士学会若手建築家賞(2010年)を受賞。ベネチア、ロンドン、コペンハーゲン、マレーシア、シンガポール、台湾、香港、中国本土にて、設計と研究を出展・発表。2017年にTony Ip Green Architects Ltd.を設立。

香港大学土木・構造工学部で環境工学を専攻。工学と建築の両分野での15年にわたる活動により、領域横断的な設計技術を習得。香港大学で工学・建築・都市計画の各修士号を優等で取得後、4つ目の修士号をケンブリッジ大学にて、構築環境の領域横断的設計で取得。現在は香港理工大学設計学院の博士課程で、高密度・高層建築での共有緑地のある都市生活を研究中。


12 ビバ・ブルーハウス
~遺産そしてコミュニティの修復
謝 錦榮
(ケネス・ツェー)

2017年 ユネスコのアジア太平洋文化遺産保全賞・最優秀賞受賞

“ビバ・ブルーハウス”と銘打ったブルーハウス建築群の再活性化プロジェクトは、都市の保全に真の意味で包括的に取り組んだ事例です。建物の住民とソーシャルワーカー、建築家、保全活動家など、様々な立場の人々が団結し、労働階級のコミュニティを守るために草の根運動を展開しました。住民たちが住んでいたのは社会から取り残された街の一角の歴史的な建物で、急速に押し寄せる再開発の波により、取り壊しの危機に瀕していました。前世紀の遺物として荒廃していた3棟の店舗兼住居は、モダンな設備を取り入れ、現代の生活に適した上質な建物へと巧みにリノベーションされました。この作品は、新しいデザインで生まれ変わった建築群の模型を、10年間の取り組みを記録した映像や、過去の遺物の記憶とともに展示しています。

謝 錦榮 Kenneth TSE(ケネス・ツェー)は、香港で育ち、教育を受けた建築家。数十年にわたりコミュニティや文化、ビジュアルアート、歴史的遺産に関するプロジェクトに従事。1997年に香港大学建築学修士号取得。2000年の青少年開発センターの建築設計コンペティションで第一位を獲得。Meta4 Design Forum Ltd.の共同設立者。代表的な受賞歴として、2009年にジョッキー・クラブ・クリエイティブ・アーツ・センターで香港建築士学会賞、2017年にはブルーハウス建築群の再生プロジェクトでユネスコのアジア太平洋文化遺産保全賞の最優秀賞を受賞。


13 建築家のいない建築
~村での自立・持続可能な生活様式
劉 永業
(トミー・ラウ)
葉 淑欣
(ジャイ・イップ)
呂 嘉兒
(カリー・ルイ)

都市が急速に拡大する一方で、ますます多くの村が過疎化しています。ライチウォー(Lai Chi Wo)村では、村民たちが生活のために村を捨てて都市へと移り住みました。この再生プロジェクトで、私たちはライチウォーに陶磁器の窯を作ろうと考えました。村の人々に、窯を使って地元の原料で陶磁器タイルを製造する方法を教え、伝統的な客家(ハッカ)住居の修復に使ってもらおうとしたのです。窯は村の新たな“心臓部”として、人々の生活を活性化させると同時に、村が自立・持続可能な生活様式を確立することの象徴にもなっています。

劉 永業 Tomy Lau Wing Yip(トミー・ラウ)と 葉 淑欣 Jai Yip Shuk Yan(ジャイ・イップ)と、呂 嘉兒 Karly Lui Kar Yee(カリー・ルイ)は、ドイツのデッサウ・インスティテュート・オブ・アーキテクチャ(DIA)で、2014年と2015年にそれぞれ建築学修士号を取得。2016年、香港にDo It Atelierを共同で設立。学生時代から、都市構造や、建築とハイパー資本主義の関係などを研究し、複数の提案で賞を受賞。過去2年間には、アトリエとして数件の建築プロジェクトや内装プロジェクトを実施したほか、アート・インスタレーション関連のプロジェクトにも従事。多様なコンペへの参加を通じてデザインのアイディアを具体化することに情熱を注いでいる。最近の関心事は、先進技術と伝統文化、建築の融合。空間表現のさまざまな可能性の探求は、つねにインスピレーションと大きな喜びをもたらす冒険のようだと考えている。


14 建築写真
~別視点からの香港
鄭 振揚
(ツゴー・チェン)

建築家が平面の図面から立体的な建築物を創り上げるのに対し、写真家は逆のプロセスにより、二次元の写真のなかに建築物を捉えます。ここに展示する建築写真のコレクションも、香港の構築環境から線と形だけを抽出し、平面的な構成に圧縮しています。建物や橋、墓地が語る物語は、建築物自体のみならず、この都市の歴史と文化の大切さを伝えるものとなっています。

鄭 振揚(ツゴー・チェン)は香港大学を最優等で卒業後、ケンブリッジ大学で修士号を取得。建築家・写真家。ナショナルジオグラフィック、ソニーワールドフォトグラフィーアワード、International Photographer of the Year、Fine Art Photography Awards、ハッセルブラッド・マスターズなど、多数の国際的な写真賞の受賞・ノミネート歴を持つ。建築が二次元の図面から立体的な空間を生み出すものである一方、写真は立体的な物体を二次元の画像に圧縮するものだが、どちらも美学と創造性を必要とするプロセスだと考えている。建築分野の経歴の影響で、風景や都市の景観の秩序やリズムに注目した写真が多い。作品は写真集“Discovering China”のほか、“Masters of Drone Photography”などの出版物、CNNやガーディアン紙、ナショナルジオグラフィック誌などのメディアに掲載。写真は香港、アジア、ヨーロッパの展覧会や、チャリティーオークションにも出品している。アートと写真分野の貢献により、2017年には香港の建築雑誌Perspectiveの“40-under-40 Artist”に選出。


15 未来的な現実 陳 建海
(ダニエル・チェン)
郭 永禧
(エリック・クォック)

現実のルールと非現実的なランドスケープが共存する香港は、サイバーパンクにとっての聖地です。

香港は、SF小説が好んで描くユートピア、そしてディストピアでもあります。私たちが良く知る都市空間は、SFのレンズを通すと未来の尋常ならざる世界に変貌するのです。

長い間、地政学的な要因から、香港は“異文化が交差する”重要な地点とされてきました。ビルボードやネオンサイン、超現実的な空間を内包する近代都市としての香港のイメージは、数々の映画に使われてきました。

このインスタレーションは、現実と非現実の領域の間に存在するダイナミックな光のレイヤーを露わにするものです。

陳 建海(ダニエル・チェン)と郭 永禧(エリック・クォック)は香港大学建築学文学士および建築学修士

Eric は2015年に台北で開かれた展覧会“過去、現在、未来―香港の建築を辿って”に参加。2011年にムーンギャラリーでインスタレーション“Memory Device”、2010年にはドラゴンガーデンで照明インスタレーション“Bottle of Memory”を展示。

Daniel は2010年の“ニューリンクス・新クントン(観塘)デザインアイデア・コンペティション”で2位。2013年の“九龍東のベンチ設置に向けた国際設計コンペティション”で特別賞を受賞。

2人は2018年“ワンチャイ・コミュニティ・グリーン・ステーション・デザインアイデア・コンペティション(プロフェッショナル・グループ)”で最終選考候補。

建築とは、空間と資材と照明を使って懐かしい思い出を植え付ける道具であり、利用者が過去とつながり、現在を生き、未来を思い描けるようにするものである。


16 #greenery 杜 澄興
(デリック・トゥ)

香港の都市景観を表す表現として、“コンクリートジャングル”はおそらく最も使い古された表現であるといえます。しかし実際には、香港の面積の66%は森林地帯です。その歴史的な背景、特異な地理的条件、ユニークな都市構造と最近の社会的価値観が相まって、香港に残る緑地は保護され、構築環境に取り入れられた新たな緑も生い茂るようになってきています。

この展示は、構築環境の中にある香港の緑に光を当てて、ハッシュタグ #greenery #architecture #urban #liveを使って新たな切り口から香港をご紹介します。

杜 澄興 TO Ching Hing Derrick (デリック・トゥ)は香港大学で建築学の修士号を取得。2014年に建築家として公認。認知された構築環境と、人の感情や心理、行動のクオリティの間には必然的につながりが生まれるという考えを持つ。

現在はAndrew Lee King Fun & Associates Architects Limitedのシニア建築家であると同時に、実験的グループ“AJ-AR (atelier juxta-architectural research)”のメンバーとして、積極的に空間構成や公共スペースと人間関係の問題を研究。グループの代表的な作品には、2012年フリースペース・フェスティバルでの西九龍文化地区の「フリー・ユニバーシティ・パビリオン」や、2015年HK/SZ Bi-city・ビエンナーレ・オブ・アーバニズム/アーキテクチャ開催中の九龍公園での「ポップアップ・シアター」など、骨組みに竹を用いた各種のポップアップ構造物がある。

地域の展示会にも数多く出展し、最近では香港建築士学会主催のイノベーション・ユース・ハウジングデザイン・コンペティションで特別賞を受賞。


感 謝

出展者の選考委員会

1次選考

陳 沐文(マーヴィン・チェン)- 香港建築士学会 会長

吳 永順 (ヴィンセント・ウン) - プロジェクトリーダー、香港建築士学会 前 会長

林 雲峰 (バーナード・リム) 教授 - 香港建築士学会 前会長

楊 麗芳 (アリス・ヨン) - 招待作品代表者(PMQ)

謝 錦榮 (ケネス・ツェー) - 招待作品代表者(ビバ・ブルーハウス)

葉 晉亨 (イップ・チュンハァン) - 招待作品代表者(香港ハウス)

鄭 振揚 (ツゴー・チェン) - 招待作品代表者(建築写真)


最終選考

吳 永順 (ヴィンセント・ウン) - プロジェクトリーダー、香港建築士学会 前 会長

林 雲峰 (バーナード・リム) 教授 - 香港建築士学会 前会長

馮 永基 (レイモンド・フォン) 教授 - 香港建築士学会 特別会員

楊 麗芳 (アリス・ヨン) - 招待作品代表者(PMQ)

謝 錦榮 (ケネス・ツェー) - 招待作品代表者(ビバ・ブルーハウス)

葉 晉亨 (イップ・チュンハァン) - 招待作品代表者(香港ハウス)

鄭 振揚 (ツゴー・チェン) - 招待作品代表者(建築写真)